DX Report

滋賀とDXについてのオリジナルレポート

  1. HOME
  2. DXレポート
  3. DXで大切なこと その①「データ」

ストーリー⑥

DXで大切なこと その①「データ」

まん延防止等重点措置を適用しなかった滋賀県
新型コロナウイルスの感染拡大第6波において、滋賀県はまん延防止等重点措置を適用しませんでした。
新規感染者数が減少を続けていることをデータから読み取り、医療体制に問題はないとの判断だったようです。
実際は予測ほど新規感染者は減少しなかったようですが、近隣府県含めほとんどの都道府県が重点措置を適用するなかで、特徴的な行政判断であったと思います。

2022年2月8日知事会見
医療こそ統計を!
wikipedia

フローレンス・ナイチンゲールはイギリスでは統計学の先駆者とされています。
医療と統計と言えば、ナイチンゲールなのですが、この事実はあまり知られていないのかも知れません。
彼女は統計に関する知識を存分に使ってイギリス軍の戦死者・傷病者に関する膨大なデータを分析し、彼らの多くが戦闘で受けた傷そのものではなく、傷を負った後の治療や病院の衛生状態が十分でないことが原因で死亡したことを明らかにしたのです。
出典:総務省統計局「なるほど統計学園」より

ウクライナ南部、クリミア半島で1853年~始まったクリミア戦争に看護師として従軍したナイチンゲールは、データに基づく医療環境改善から多くの人々を救ったと言われています。
コロナは人々の立場や考え方の違いを鮮明にあぶり出しています。客観的な判断が求められるなかで、データに基づく施策や議論が進み、さまざまな問題に対してどこに手を施せばいいか決める際、データがさらに活用されることを期待したいです。
ビッグデータ・オープンデータ・パーソナルデータ
データにはさまざまな意味が込められていると思います。活用分野やそこに関わる人たちの考え方でいろいろなまとめ方や説明の仕方があるかと思います。DXを推進する情報通信の分野では、一般的に次のような整理ができていると思います。

①ビッグデータ
大規模組織や市場、サービスなどで生成されたデータを指すが、具体的な規模の基準はない
規模が大きいデータそのものと、その周辺技術の説明に使われる
②オープンデータ
機械判読可能で、営利を含めた二次利用可能なデータのこと
③パーソナルデータ
特定の個人と関係性が把握できる広範囲なデータのこと

よく誤解されがちで、言葉遊びのようなところもありますが、例えば、ある一つのデータは、このなかのどれか一つにだけ該当するものではないということです。とあるデータは、ビッグデータでありながら、オープンデータでもあるということです。
データ活用のためにはそれぞれについて理解を深めておく必要があります。特にパーソナルデータは個人情報保護法など法律で制限を受けることもあり、慎重さが求められます。
これらデータの違いや注意点については、滋賀データ活用コミュニティで開催したオンラインセミナーの資料も参考になります。
DX・スマートシティ時代に 正しく理解しておきたいデータの基礎知識
官民挙げたデータ活用の推進
2016年12月7日、官民データ活用推進基本法が公民データの適正かつ効果的な活用の推進を目的に成立しました。
この法律は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて流通する多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、急速な少子高齢化の進展への対応等の我が国が直面する課題の解決に資する環境をより一層整備することが重要であることに鑑み、官民データの適正かつ効果的な活用(以下「官民データ活用」という。)の推進に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務を明らかにし、並びに官民データ活用推進基本計画の策定その他官民データ活用の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的とする。官民データ活用推進基本法:e-GOV 法令検索

オープンデータは行政データのオープン化だけではなく、民間もこれに積極的に参画することが求められています。コロナのような社会課題に対して、事実に基づく対話を行うためにも公民挙げたデータの公開が進むことが望まれています。
行政がデータを公開するのはもちろん、民間からも安心してデータの提供ができるような仕組みの構築を実現するため、例えば滋賀県地域情報化推進会議で先頃採択された「誰もが主体になれるオープンデータ推進のために」のような取り組みは大変重要と思います。

<安心>
データの利活用と個人情報保護のバランス
自社事業への影響 など

データ活用には官も民もなく、それを推進していこうとする法律がすでに5年前に、それも議員立法で成立しています。データ活用推進のためには、まずデータの公開が進まなければなりません。
コロナのような社会課題に対して、先に紹介した滋賀県の取り組みのように、事実に基づく施策を行うために、そして県民とも対話を行うためにも、さまざまな立場からのデータ公開が進むことが求められます。民間からすると競争力の源でもあるデータを、そう簡単に公開できないというのは当たり前ですので、安心してデータを公開し、それが地域への貢献となるように、オープンデータ憲章のようなものを協同で作り上げていく必要があると思います。
データ活用を推進する上での二つのキーワード
DFFT:Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通)とベースレジストリ

①DFFT


安倍首相(当時)は、2019年の世界経済フォーラム年次総会で
「成長のエンジンはガソリンによってではなく、デジタル・データで回っている」と宣言し、その際「Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通)」を世界に向け提唱しています。

DFFTとは「プライバシーやセキュリティ・知的財産権に関する信頼を確保しながら、ビジネスや社会課題の解決に有益なデータが国境を意識することなく自由に行き来する、国際的に自由なデータ流通の促進を目指す」
出典:デジタル庁公式サイト


岸田首相も2021年10月30日のG20サミットにオンライン参加し、世界に発信しています。

こちらは経団連のwebサイトから引用したもので、DFFTに対する考えを打ち出しています。
このように、データを域内で保護するヨーロッパ、国家で管理する中国、そしてテック企業が囲い込むアメリカに対し、日本はデータを自由に流通させることで経済成長を!と打ち出しています。
まさに、データの三方よしだと思います。

<DFFT推進に向けたデータ流通政策>
はじめに
Ⅰ.データ流通全般に関するルール
1.データ流通の基盤
(1)データ流通促進に関するルールおよび民間提供データの取扱い
(2)トラストの構築
(3)分野間データ連携ツール
(4)データに関する権利
2.行政におけるデータの整備
(1)ベース・レジストリ
(2)利用者ニーズに合ったオープンデータの推進
3.越境データの保護と流通に関する国際ルール
(1)データローカライゼーション規制のあり方
(2)ガバメントアクセス
Ⅱ.個別分野における課題
1.健康・医療分野
2.教育分野
おわりに
出典:経団連公式サイト

日本はこうした姿勢を世界に向けて明確に打ち出していますから、データ公開、データ活用により積極的に取り組むことが求められると思います。

②ベースレジストリ
ベースレジストリは国により「公的基礎情報データベース」と名付けられた社会の基本データです。

行政手続のワンスオンリーを実現するなど社会全体の効率性の向上を図るとともに、スマートシティ等の新しいサービスの創出を図るためには、マイナンバーや地理空間情報など社会全体の基盤となるデータを整備・活用することが必要です。
そこで、まずはベース・レジストリを、「公的機関等で登録・公開され、様々な場面で参照される、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データであり、正確性や最新性が確保された社会の基盤となるデータベース」と定義し、その整備を推進することとしております。
< 国が指定したベースレジストリ(一例)>

出典:ベース・レジストリの指定について 令和3年5月 2 6 日 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室

社会にベースレジストリが存在すれば何が変わるかと言うと、普段データを活用するシーンを思い出していただきたいのですが、まずどこからデータを持ってこようか探すところから始めたり、いわゆるデータの前処理(クレンジング)など、本来の活用・分析に至るまでに膨大な時間を要しているかと思います。ベースレジストリがあれば、本来業務に集中できるようになると期待できます。
当面、官のデータが整備されていくようですが、民間のデータも三方よしの理念の元、どんどん活用可能となることがよりよい環境を誰もがてにできることにつながるかと思います。
出典:IT総合戦略本部データ戦略タスクフォース(第1回)ベース・レジストリの概要より

行政が収集するデータはもちろん、民間等が収集したデータにも、ベース・レジストリとして利用することを前提にした対応が望まれる。
まさに三方よしです。