DX Report

滋賀とDXについてのオリジナルレポート

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ストーリー④

滋賀県は製造業ありきなの?

滋賀のDX = 製造業のDX?
滋賀県といえば製造業!といわれるくらい大小のメーカーが工場を置いていますが、そこに従事していた一人としていろいろと感じるところがあります。
製造業が基幹産業であることは、これまで滋賀県の大きな強みであり、発展を支えたものと思います。当然、それに沿って行政も体制を構築してきたわけです。
特に私が従事していた電器産業ですが、西暦2000年を迎えたころから急速に国際競争力を失い、今では大変悲しいことになっています。私が就職した1980年代後半には定年まで安泰と言われたのが嘘のようです。
そうした状況にあって、行政はそれを支えようとしましたが、もしかしたらその結果、デジタル産業育成が後手に回っていないかと感じています。
滋賀県でDXと言えば工場にデジタル技術を導入して変革を行うことが中心のように見え、デジタルコンテンツを中心とした新産業創出に向けた施策はなかなか見えないように感じます。
県内総生産に占める製造業の割合

こちらは2018年の実績です。この数字を見ると行政の施策が製造業中心になってしまうのも仕方ないかもしれません。
2027年開校を目標にした公立の高等専門学校開設の動きがありますが、その構想案には「情報技術」という単語が頻繁に登場するものの、結局は製造業でそれをどう使うかという域から脱していないように見えるのが残念です。
滋賀県公式webサイト
滋賀県庁の情報産業統括部門はどこ?
情報通信はどの分野にも関連する基盤であって、トータルに横串を通せる組織が必要なはずなのですが、現実にはそれぞれの産業を支援することが局所的に抱えてしまっているように感じます。
滋賀は昭和の日本を支えた製造業のメッカのような場所で、それが大きな強みだったと思うのですが、今後はそれが弱点になっていくような状況とも言えます。
それじゃあ、行政が今後製造業の支援をやめて、情報産業にシフトしていくべきといって言ってるわけではありません。

製造業は、かつて「日本総中流」といわれた分厚い中間層を生み出す力をもっていたのですが、情報産業はアメリカの例にもあるように「勝者総どり」なんですね。それではまずいわけです。そうは言っても製造業が弱体化していくことは分厚い中間層が減少していくことになりますから、今後、地域経済に大きな影響が出てくると予想されていると思います。

●DX推進=>デジタル化の推進となり、企業の投資は有形資産(工場・店舗)から無形資産(ソフトウエア、データ)に重点が移り、第二次産業が得意とした一ヶ所で大規模な雇用を生む力は小さくなる
●雇用そのもののカタチもかわる
 メンバーシップ型雇用 => ジョブ型雇用 => プロジェクト型雇用
●情報産業はアイデアを生むわずかな人々に利益が集中する「勝者総どり」を招きがちでもある

情報産業の発展により、わずかな高額所得層とそれを支えるエッセンシャルワーカー、低所得の単純労働者だけが必要とされて、日本経済を支えた分厚い中間層は消滅した?ともいわれています。
滋賀県は製造業(中間所得層)の割合が高く、中間層が徐々に減少し、これから地域経済に大きな影響が出てくるのではと危惧します。
滋賀経済団体連合会と滋賀県の共同メッセージ
2021年6月18日付で滋賀経済団体連合会と滋賀県の共同メッセージが発出されています。
そこには
約1年半に及ぶコロナ禍の中で明らかとなった課題の解決に向け、滋賀経済団体連合会と滋賀県は、コロナ禍を乗り越え、持続的な成長を目指します。滋賀経済団体連合会と滋賀県の共同メッセージ
との記載がありました。
「持続的な」や「持続可能な」という表現はSDGsへの関心の広まりとともに、多様な場面で利用されるようになりました。目先の自己成長ではなく、地域社会全体ともに成長する事業でなければ持続可能とはならず、まさに三方よしそもものと言えます。
域内循環の拡大をめざす
では、持続可能な成長を目指すためにはどうするのか?
多額の補助金や税制優遇を行い、域外から工場や大学を誘致したり観光客を呼び込むなど、ほかの地域との競争に勝ってどれだけ外から持ち込めるかで勝負してきたのがこれまでの姿であったと思います。
これからの持続可能な地域社会構築のためには域内の循環をどれだけ拡大できるかにかかっていると思います。

こちらはコネクターハブ企業のイメージです。
2014年度版中小企業白書より

白書内では域外から資金を集めて付加価値を生み出し、そこで得られた資金を地域に循環させているある程度の規模の企業をコネクターハブ企業と定義しています。

2014年度版中小企業白書より

滋賀県に本社を構えるコネクターハブ企業は他道府県に比べ、かなり少ないことがわかります。三方よしを経営哲学としてきたこの地であれば、もっと多くてもいいように思うのですが。

一方で
RESASより

こちらにあるように滋賀県の地域経済循環率は2015年でほぼ100%となっていてバランスが保たれています。
湖南地域は軒並み110%を超えていることから、大手製造業の工場や、栗東市にあるJRAトレーニングセンターなどがその役割を果たしているように思います。それらはいつまでもこの地にあるとは限らないので、地域に根ざしたコネクターハブ企業を増やし、域内循環をさらに拡大することが必要です。そこでDXが果たす役割を議論していく必要を感じます。
域内循環拡大にDXが果たせる役割
これまで行政や金融機関、経済団体などが企業マッチングをアナログでおこなってきました。対面で情報を得たり、商談を行うことは安心・安全な商取引につながることは間違ありません。しかし、誰でもが気軽に参加できる場所でもなく、またどうしても規模が求められる場になると思います。

『さかしる』は、国が公開している企業のオープンデータをもとに、堺市内に本社等を構える約 2万4千社の法人企業情報を掲載し、市内企業が自ら情報を入力することも可能となるオープンデータポータルサイトです。さしかる(Sakai BIZ Portal)

こちらは堺市産業振興センターが運営している企業情報サイト「さしかる」。
国が運営する「gBizINFO」からオープンデータである市内の法人企業データをもってきて、さらに、企業自らが「GビズID」でログインしてデータを追加できる仕組みになっています。
国から出向されてきた方が主導して構築されたサイトと伺いましたが、仕組みとしてうまく作ってあると思います。
こうしたサービスで重要なことはデータ更新なので、そのためにもここを通じたさまざまな成果が求められることになるかと思います。

現在は市内の事業者を探すにも「業種コード表(日本標準産業分類)」で検索するしかなく、いわゆるあいまい検索ができません。
販売先や仕入先を検索しやすくしたり、登録企業が売りたいものや買いたいものをあらかじめ登録しておけばマッチングが行われて企業が紹介されるなどの機能が実装されれば活用が進むのではないかと思います。そのほか、転職サイトで流行のスカウト機能なども有効と思います。

企業も自らの利益につながるなら活用するでしょうが、面白そうとかそういうレベルでは使ってもらえず、データが整備されない結果使われないサービスになってしまうのはもったいないことだと思います。
それを改善するためにデジタルでできるところをどんどん増やしていくしかありません。