DX Report

滋賀とDXについてのオリジナルレポート

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ストーリー①

DXに取り組む前に

DX(Digital Transformation)はバズワード?
情報通信の業界では、数年単位で流行語のように新しいワードが生まれます。
「DX」は2020年ごろからよく目にするようになったと感じますが、その前のバスワードの一つは「IoT」かもしれません。
2022年になると「web3.0」を使い出したところもあり、このようにDXも数年のうちには使われないワードになるかもしれません。
「DXが使われない言葉になった=DXが実現した」かというと、そうでもないと思います。
アナログをデジタルに置き換えるという範囲に限定するなら、それは何十年も前から継続して取り組まれていることです。
注意しなければならないのは、デジタルに置き換えるべきアナログが、現在のように「人や組織の都合」でいつまでもアナログのままでいられるのかどうかだと思います。
これまではさまざまな都合で放置されてきたものが、それでは済まなくなる時代が目の前に迫っています。
今後は、デジタルで処理可能なことはデジタルで、アナログを大切にしなければならないものはアナログのままで、とお互いの棲み分けを進めなければならないと思います。
少し前にあった「IoT」はどうなったの?
滋賀県においても、2017年頃から取り組みが始まった「IoT」

こうした取り組みは自治体の予算がなくなると同時にどこかへ逝ってしまったように見えます。
もちろん、この取り組みを通じ、さまざまなところでIoTの取り組みが進んだことも事実だと思います。

2022年1月26日 日本経済新聞

シャープの家電は400万台ネットにつながっているらしいのですが、多くの家電メーカーが高価格機に搭載しているこうした機能に、消費者はお金を出したいと思っているのでしょうか?
日本の製造業がガラパゴス化したのはこのようなものづくりの考え方からのような気がします。
もちろん、消費者が今求めていること、あるいは今後求められるであろうことのいずれかにつながっていれば無駄な技術ではないと思います。
FAXが一番効率的で、かつ情報セキュリティが高い?
2022年2月6日 産経新聞

2022年2月3日に共同通信が配信した記事には「大阪市、1万2700人計上漏れ 感染急増で保健所の処理能力超過」のタイトルがありました。多くの病院がカルテを電子化している現代でも、医療機関と保健所がうまくつながらないのはなぜかと疑問に思います。
<医療機関>
・システムが入力しにくい
・入力している時間があれば患者対応優先
・個人情報の誤送信が怖い
<保健所>
・FAXで送られてきた文字が潰れている
・FAX内容の再確認を電話で聞き取り
などが理由でつながりが悪いらしいですが、なんと今でも「FAXが一番効率的で、情報セキュリティが高い」と現場が認識しているそうです。
マイナンバーカードの普及率、未だに四割
「義務化」を打ち出した途端、方々でたたかれマイナンバーの普及そのものに影響が出るからかもわかりませんが、国はあくまで国民一人一人の判断に任せる方針のようです。そうしたなかで、国民の利用環境に問題が出てくるようになりました。単にカードを持っていたらOKというわけにはいきません。古いスマートフォンではサービスが受けられなくなっています。

■スマートフォンの機種が古くてマイナポイントを受け取れなかった人の例
タイトルには悪意を感じますが、マイナンバーカードを持っていてもサービスを受けられないのは事実です。
マイナポイント「誰でも簡単」の嘘 50代女性が申請を諦めたワケマネーポストWEB

■帰国時、スマートフォンにCOCOAをインストールできなかった人の例
同じくタイトルにかなりの悪意を感じますが、機種が古ければ使えないようで、費用は自己負担らしいです。
日本に帰国したら成田空港で壮絶いじめ「古いスマホなら1万5000円払って」現代ビジネス

1990年代後半以降、いわゆるシステムのオープン化が進んだことにより、利用者の環境が複雑になっていきました。
複雑な環境にサービス提供者がどこまで追従する必要があるのか?
オープン化以前であれば利用者環境に合わせたサービスを提供する、対応できない場合はサービス提供者がコスト負担して利用者の環境を整える、が普通だったように思います。言い換えれば、サービス料金に利用者の環境整備費もしっかり載せられていたわけです。
それが今は完全に独立しているため、あらかじめ提示された環境以外でサービスを利用できないのは普通です。
民間のサービスならこれでいいはずですが、税金で提供されている公共サービスの場合はどうあるべきなのでしょう?
上の事例では、利用者がわずかしかいない環境に合わせるため、膨大なコストを国民全体で負担しなければならないことを説明・共有していない(しても理解されない・・・)からこうした不満がでるように思いますが、「誰一人取り残さない」という最近流行のフレーズを意識すると、一人しかいない環境であっても公共サービスならそれに合わさなければならないという考え方もあるかもしれません。
DXは意識改革・・・三方よしへ
こちらで紹介したさまざまなケースの問題が発生している理由は「技術力不足」ではありません。すでに技術的には解決できているのにさまざまな「都合」や「事情」で止まっているものがほとんどです。サービス提供側、サービス利用側、どちらも意識改革を行いそれを今ある情報技術で手助けすれば解決するケースは多分にあるように感じます。
最初から大きなお金をつぎ込み、「都合」や「事情」に縛られ局所的に新たなハード・ソフトを導入することがDXではなく、意識改革の結果、実践手段の一つとしてテクノロジーを利用することがDXと言えます。そして、その意識改革の根幹こそが三方よしなのではと思います。